Home > 研究内容(研究テーマ/研究内容)

研究テーマ

 本研究室では、細胞骨格タンパク質と、それらが担う細胞の形態形成や細胞運動について、主に細胞生物学的な方法を用いて研究しています。

 とくに、アクチンの機能と鞭毛・繊毛形成に着目した解析を行っています。



研究内容

生物材料

 緑藻クラミドモナスとその近縁種、動物培養細胞などを用いています。 Volvocales


アクチンの機能と多様性について

 アクチンは微小管とともに、真核細胞の分裂や運動、細胞内情報伝達など、さまざまなな機能に関わる、生命にとってきわめて重要な細胞骨格タンパク質です。クラミドモナスを含む緑藻ボルボックス目には2種類のアクチン遺伝子が存在します。簡単のために、私たちはこれらをアクチン、NAPと呼んでいます。このうち、アクチンの配列は高等動植物のアクチンのそれと非常に似ており、機能的にもほぼ同じような働きをしていると考えられます。一方、NAPは、一般的なアクチンの配列と比べると、アミノ酸配列で60%程度しか配列一致度がありません。NAPはクラミドモナスのアクチン欠損株 (Kato-Minoura et al., J. Cell Biol., 1997) では高発現し、アクチンの機能を一部代替することが判っています (Kato-Minoura et al., BBRC, 1998)。しかし、それ以外のNAP独自の機能については、クラミドモナスの接合時と鞭毛形成時に一過的に強く発現すること以外は、ほとんど判っていません。

改変型アクチン遺伝子の導入によるアクチン・NAP の細胞内機能解析

 アクチンとNAPの発現制御領域を互いに交換したキメラ遺伝子を作成し、アクチン欠損株に導入したところ、NAPの発現制御領域をもつアクチン遺伝子の導入株では、アクチン遺伝子の欠損による低運動性などの表現型はほぼ回復しましたが、脱鞭毛後の鞭毛再生能力が著しく低くなっていました(Kato-Minoura, Zool. Sci., 2005)。NAPはアクチンとともに鞭毛形成時に一過的に高発現しますが、その際に2つの遺伝子が正確に発現制御されないと、鞭毛形成に不都合が生じるものと考えられます。アクチンが鞭毛のモータータンパク質ダイニン内腕の軽鎖として鞭毛に含まれることは古くから知られていましたが、鞭毛形成とアクチンとの関係はまだあまり注目されていません。私たちの研究室では、アクチン欠損株への改変アクチン遺伝子の導入系を軸としたさまざまな分子生物学的・細胞生物学的研究により、鞭毛・繊毛形成におけるアクチンの役割を明らかにすることを目指します。

Fertilization tubule   アクチン重合のモデル系としての接合管形成

 クラミドモナスでは、接合時に+型の配偶子から接合管と呼ばれる突起を形成します。接合管には重合したアクチンの束が含まれています。細胞にたった1本だけ生える接合管は、生体内でアクチン重合を観るための、きわめてシンプルなモデル系となり得ます。また、2007年にはクラミドモナスの全遺伝子配列が決定されましたが、その結果、この生物はごくわずかな種類しかアクチン関連タンパク質を持っていないことが判りました。関連遺伝子の数も少なく接合管の形もシンプルなクラミドモナスの利点を生かして、アクチンやアクチン関連タンパク質のふるまいを調べます。 Fertilization tubule in ida5


緑藻類アクチンの分子進化に関する研究

 現在のところ、クラミドモナスに近縁のボルボックス目緑藻において、NAPのホモログが見つかっています。クラミドモナスNAPを動物培養細胞内でエクトピックに発現させたところ、NAPはラメリポディアなどアクチンがはたらく場所に集積し、内在性のアクチンと部分的に共局在しましたが、そこでのアクチン重合には全く寄与しませんでした(Kato-Minoura, BBRC, 2011)。NAPは一般的なアクチンに比べて著しく重合能が低いと考えられます。クラミドモナスや他のボルボックス目緑藻は配列保存性の高いアクチンを持つにもかかわらず、このように性質の異なるNAPが共存する理由は不明です。分子系統解析により、NAPの起源や緑藻類アクチンの分子進化を明らかにすることを目指します(東京大学 青木誠志郎博士との共同研究)。


鞭毛・繊毛の形成機構について

primary cilia 動物培養細胞の一次繊毛形成

 一次繊毛 (primary cilia) とは、多くの動物細胞が持つ、不動性の繊毛です。感覚受容器としてはたらくとされ、一次繊毛の形成不全により不妊や多発性嚢胞腎(polycystic kidney disease, PKD)などの重篤な疾患が引き起こされます。一次繊毛と、クラミドモナスなどの運動性鞭毛の形成にはどちらもIFT(鞭毛内輸送)が関わるなど、共通点が多いので、ライブイメージングなどの手法を用いて動物培養細胞の一次繊毛を観察し、その形成過程を調べます。




tubulin チューブリンの分子内構造が異常な突然変異体の新規取得と解析

 コルヒチンなどの薬剤は、チューブリンα/βヘテロダイマーの間に割り込んでそのコンフォメーションを変化させることにより、微小管の重合を妨げる効果をもたらすと考えられています。突然変異株が容易に取得でき、さまざまな分子生物学的研究手法が開発されているクラミドモナスの利点を生かして、微小管重合阻害剤に対して耐性または超感受性を示す突然変異株を新たに取得します。それらの変異はチューブリン遺伝子上にあることが期待されますが、その部位を特定することにより、チューブリンの構造上で微小管の機能に重要なドメインを見いだします。