4分割ダイオ−ドを使ったナノメーター精度計測装置について

2D-nanometry sensor with a quadrant photodiode

4分割フォトダイオードと通常の光学顕微鏡装置を用い、非常の高い精度(ナノメーターから数十ピコメーターの精度)で、微小物体の2次元位置変位を安定して計測できる装置を作ることができます。顕微鏡像の上では直接確かめるできない微小な運動、高速の運動の計測、分子スケールの運動解析に使うことのできる技術です。細胞運動や分子ゆらぎ、分子顕微操作の研究に使われています。
 
当研究室で は、現在、計測技術を数10 pm(0.05 nm)まで向上させることに成功しました。計測条件にもよりますが、以下のような性能検査が可能となっています。高精度性能検査の委託など、ご興味のある方は、適宜、ご相談下さい。⇒ 測定例   ⇒研究室案内の頁
・汎用型電動マイクロメーターヘッドの動作確認(最小ステップの精計計測、直進性・分解能・振動特性・バックラッシュ等の測定)
・精密ナノメーターステージの2次元動作確認
・微小粒子(1μm程度の径)の精密振動計測

<センサー回路使用上の注意>回路図はこちら
  1)位置計測には関係しない余計な背景光が、光センサ(フォトダイオード)に入射することは極力避けるのが望ましい。フォトダイオードで光電流が発生するときの統計的なゆらぎ(ショットノイズ)が大きくなるためである。


2)上の理由で、計測する対象は、暗い背景に白く輝くような物体がもっとも適している。レーザー光によって小さく絞った光路に置いたマイクロビーズ、ブライト コントラストの位相差顕微鏡像などが適している。暗視野照明顕微鏡、蛍光顕微鏡では一般に光量が不足し、測定精度を上げることは難しい。
3)回路設計上、初段の高精度オペアンプ(OPA111)入力部周辺の回路引き回し方法が最も重要となる。実際に5Gオームもの非常に高い抵抗値の帰還抵抗まで問題なく作動することが確認されているが、高抵抗器の場合、それ自身の持つ内部容量成分(0.1〜0.5pF)のために、10msecほどの時定数となり、レスポンスの低下が見られる。
4)逆にこの帰還抵抗を低くすると、増幅率とショットノイズが減少し、時定数が早まるなどの性能上の変化が起こる。低すぎる帰還抵抗の場合、フォトダイオード独特のノイズピーキングが起こるので、並列に適当な容量のコンデンサ(スチロールコンデンサが望ましい)を入れるのが良い。

詳しいことをお聞きになりたい方、質問などは、@ or @どうぞ。



<参考文献>Kamimura, S. (1987) Direct measurement of nanometric displacement under an optical microscope. Appl. Optics, 26(6):3425-3427. 装置開発について
Kamimura, S., Kamiya, R. (1989) High-frequency, nanometre-scale vibration in 'quiescent' flagellar axonemes. Nature, 340:476-478. 応用実験
Kamimura, S., Kamiya, R. (1992) High-frequency vibration in flagellar axonemes with amplitudes reflecting the size of tubulin. J. Cell Biol., 116:1443-1454. 応 用実験
Kamimura S. (1988) 細胞運動測定法 nm精度での顆粒運動の解析  生体の科 学 39(5):493-495. 顕微鏡を使った光学的計測手法一般
Kamimura, S. (1989) 光学顕微鏡で細胞運動を高精度で見る  パリティ,4(5):56-58.  ナノメーター計測の紹介記事
Kamimura, S. (1990) 光学顕微鏡によるnm精度での運動の解析  生物物理、30(4): 39-41. ナノメータ計測手法についての解説
Kamimura, S. (1993) 運動をナノメートル精度で測る  −顕微計測−  実験生物物理 (石渡信一編,石川他著)丸善社  31-44.
Kamimura, S. (1995) 高解像度運動解析  細胞 27(8):(297)9-(301)13.